Soliloquy

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とにかく少年Sは若干5歳にしてめでたく……かどうかは知らんが独り身となったわけだ。 ここで普通は施設にでも保護されるのだが、どうも母親の親族はとにかく世間体とかいうものを気にする人たちだったらしい。 結局施設には行かずに、親族中をたらい回しにされた。 まあ厄介者だ、はっきり言えば。 勝手に出て行き勝手に死んだ母親の忘れ形見なんて可愛がれるわけもない。 そんな周りの愛情に恵まれなかった可哀想な少年Sは、ひねくれ曲がったそれはまた可愛くない少年へと成長していったわけだ。 まあ別にそれはそれでいいのだろうが問題が一つだけあった。 ――その少年Sが俺だったということだ。 これは都合の良い、いい訳のように聞こえるだろうが、こんな生い立ちでもまっすぐ育つヤツなんていない。いるとしたらそれこそ聖人君子だ。 よって俺が悪いのではなく、この世界が悪いのだ。 どうせならこの俺を聖人君子として生まれさせればよかったのに、そうしなかったこの世界が間違っているのだ。 だから、人生なんてなんにも面白くない……なんてことが簡単に言える。 人と関わるのは面倒だし何かやりたいこともあるわけでもない、だがこればっかりは仕方がない。そういう性格なのだから。 それは高校3年生になった今でも変わらない……というかどんどん悪化している。 中学を卒業して親族の家を逃げるように出ていき、一人の力で生きれば何か変わるかと思った頃もあったがてんでそんなことはなかった。 ――とりあえずこの世界はとことん俺に対して不条理なようだ。 ハードモードなんて生易しさじゃない。 一時間も経たず誰もが匙を投げ出すような欠陥だらけのクソゲーだ。 だから言ってみればいつゲームオーバーになろうがどうでも良かった。 ただ死ぬのは痛そうで面倒くさいからなんとなく生きてるだけだ。
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