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ものごころ
私がものごころついたと自分で思う頃は、保育園を卒園するくらいの頃でした。
あることを強く覚えています。
それは、
母が祖母への電話越しに、ボロボロと涙をこぼしながら、
「お米が無いんよ…。…ごめんなさい。わかってます。…でも、本当にお米が無くて…」
「野菜も…分けて貰えませんか…。子供たちの給食費もなかなか期日通り払えない状態なんです。」
と、話している声。
その、黒電話の受話器をぶるぶると握りしめて、何度も涙でかすれてしまう声を振り絞り、頭を抱えて椅子に腰掛けている姿。あの姿は忘れられない…。
そんなやり取りは頻繁に、そして、私たち子供を気遣って、必ず夜に繰り返されていました。
でも、私はこっそりとふすまの隙間からそんな母の姿を見ていたのです。
その時を私はものごころついた頃だと思っています。
そして、私はこの頃からある強い望みを持つようになりました。
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