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「あんた、手紙届いてたわよ」
「俺宛?」
「うん。差出人の名前は書いてないんだけど」
黄ばんだ茶封筒。お袋からそれを受け取ると、無造作にかばんに詰め込んだ。出かける身支度をする。
「じゃあ、また正月辺りに帰るから。親父にもよろしく」
「本当にお墓参り行かなくて良かったの……?」
「…………じゃ」
玄関を開ければ、柔らかい午後の陽射しが俺を照らす。肩にかけられた荷物には、重くずしりとした感覚があった。
静かに澄んだ空気を肺いっぱいに溜め、ゆっくり鼻から吐いていく。鉛を取り付けたような足取りで、俺は駅へと歩みを進めた。
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