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   不器用な文字が並んだ手紙だった。封筒だけでなく文字が綴られた紙も変色している。  見覚えのある字面。記憶の片隅にある文章。俺はこの手紙を知っている。 「二十歳になった俺へ……か」  ローカル線に揺られ、窓から覗く田園が名残惜しく外を横切っていく。青々と広がる夏空は、上へ上へと伸びる雲で所々覆われている。盆の終わりに東京へ向かう電車の中で、俺は先ほど預かった手紙の封を開けていた。  十代前半くらいだっただろうか。当時、友人知人の間で流行っていた、未来の自分へ手紙を書くという遊び。郵便局でそういうサービスが行われていて、俺もそれにさり気なく参加していた。  周りも面白半分で始めたので、そのブームはすぐに廃れ、いつの間にか忘れ去られていた。確か俺は、他の友達が飽きたと言っていても尚しばらく続けていた覚えがある。手紙というより、その日あった出来事などを書き綴ったただの日記になっていたような覚えもあるが。  
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