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外は雨だった。
雨は色鮮やかな旋律を奏でる。
車のガラスに当たる音、水溜まりに吸い込まれる音、コンクリートを打つ音。
べっとりと張り付くような湿気と不快感。
わたしは鞄を頭に乗せ、落ちないように走った。
途中、小さな横断歩道を横切ろうと足を踏み入れた途端、キキッと大きな音がした。
振り向くと、すぐ真横に車のボンネットが迫っていた。
「気を付けろ!」
大声で怒鳴られ、わたしは逃げるように横断歩道を横切り、真っ直ぐ伸びる坂をめがけてひたすら走った。
横切った瞬間、雨でわたしの視界はぼんやりとしていたが、しっかりと視界の端には歩行者用信号機が映っていた。
その色は赤く、まるで血の色のように見えた。
わたしがその信号機の横を走った途端、青に変わる。
それはまるで彼の青白い肌のようであった。
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