天使の梯子

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「ミカエルさん、寂しそうでしたよ?」 「こんな落ちぶれた弟と会うよかマシだろ」  すると扉の前に立っていたアジャラは銀髪の青年、ルシファーへと姿を変えた。仔猫は首を傾げ、姿を変えた少年を不思議そうに見ている。 「其れにしても、天使も、泣くのですねぇ」 「まーな。あっちじゃ人が地獄に堕ちる度、わんわん泣いてる奴(天使)も居るぞ」  そう言うと、ルシファーは入って来たアジャラの身体に寄りかかった。 「おや、おや」  ルシファーの頭を撫でるアジャラ。 「悪魔も、泣くのですね」 「……うるせーよ」  強がっても、頬を伝う其れは止まらない。 「お前は、泣かねぇのかよ」 「ふふ。戯れに、本気はありませんから」  だから、“哀しみ”という感情は生まれない。 「ただ、気楽に、気ままに……。其れだけです」  だから戯(アジャラ)と、名乗っているのだ。 「しかし、戦は私も嫌いですね。あれは、とても哀しかった」 「は?」 「全て、燃やしてしまったから」  戯は、メルスハウゼンの頬を撫でながら言った。 「さて、人を呼ばないと、ね」  燃える、燃える、火の海で  消え去る故郷、死に逝く人々  “   ”にむかって、両の手を合わせ 愛しい“   ”と、    サヨウナラ――……。
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