65人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
冬美は自分が今までにやって来た事全てが無駄だったんだと、嘆き途方に暮れた。
「定員オーバーって何よそれ。父さんも母さんも壺の中だなんて、苦しいよね。怖いよね。父さん…母さん…」
こんな事になるのなら死者になっても、この場所に残って欲しい。冬美はそう考えたのだ。
それから間も無く、冬美はまたテレビの怪奇特集番組に参加していた。
「伊原さん? 伊原さんどうしました?」
「いえ」
「次はあのトンネルの向こう側へ歩いてみて貰えますか?」
「はい」
冬美は考えた。
トンネルの向こうに見える死者も、これから出会っていく死者も、全て私がこの現世に匿っていかなきゃと。
それはいつか、この国が霊で溢れかえる事になると解っていても。
最初のコメントを投稿しよう!