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「カーット!! 伊原さん申し訳ありませんが、もう少し呼吸を荒くしてもらえますか」
「はぁ?」
此処は夏になると心霊を特集したテレビ番組や雑誌、インターネット等で頻繁に取り上げられる廃墟になった曰く付きの市民病院。
そしてそれら番組に欠かせないのが、いま巷で話題の霊能者伊原冬美(42才 )。
8歳の時に両親を乗せた大型旅客機がエンジントラブルを起こし墜落炎上。幼くして両親を喪った。
高校卒業までを父方の祖父母が住む青森県の津軽で過ごすと、進学を機に上京した。
両親を亡くして間も無くの事だった。
二人の霊を目撃するようになった冬美は、他の人間とは違う力がある事を知る。
「あの、伊原さんは三十年以上前にご両親を飛行機事故で亡くされてるとの事ですが、ご両親が見えた事はあるのですか?」
若手の女性レポーターは冬美のプライベートにまで足を踏み入れる。
冬美は空を見上げると、一呼吸し顔を顰めてレポーターに応えた。
「いいえ。二人は既に天に召されましたよ」
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