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「いいえ。この病院に霊など存在していません」
「カット! 伊原さんそれじゃあ困るんですよ。嘘でも良いから“其所にいる"って言ってくんなくちゃ」
「でも、それじゃあ…」
「良いんですよ。貴女がそう言ってくれれば、見ている視聴者は恐怖に戦くんですから」
見えていないのに、見えると言う詐欺霊能者は幾らでもいる事を十分知っている冬美。
なのに冬美は
「此処です! このモニターの右端、階段の踊り場の所に若い女性が佇んでいるのが見えます!」
慌てた様子でレポーターは冬美の傍らに歩み寄り、泣きそうな顔で実況を続けた。
冬美は今日も嘘を付いしまった。
番組が放映されると、お盆休みという事もあり高視聴率を獲得。ますます冬美の名は世間に知り渡ったのだ。
霊に悩まされる視聴者からは続々と依頼の手紙が送られてきた。
だが、それとは対称的にインチキだという疑惑や誹謗中傷、更にその卓越した力を使った金儲けだと非難する手紙も中にはあったのだ。
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