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「あれは何?」
冬美は何人もの死者を目撃してきたが、その者は死神と呼ぶに相応しい出で立ちだ。
全身を黒いローブで被い、背を向けていて顔を確認出来ないが、真っ白の肌が時折動作をする事で微かに見えた。
冬美は足が竦んで動けない。
すると冬美の存在に気付いたのか、そいつが振り返った。
「居るのは解ってるよ。貴女には私が見えるんでしょ。フフフ」
その顔は蒼白で獣のような大きな口を開き、吊り上がった目は睨まれたら反らせない眼力。
そいつは腕に琥珀色の壺を抱えていた。
大きさは生後二ヶ月程の赤子といったとこだ。
冬美は微動だ出来ないでいた。
何とかしなきゃと、歯を噛み締め後退を試みる。
しかし、下半身の全神経が脳の信号を邪魔し全く動けなかった。
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