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「ほお…見えます、か」
「貴方の傍で何かが渦巻いている。最近からじゃない…ずっと昔から……。貴方は何者ですか?…抑(ソモソモ)人間なのですか…?」
薬売りがその問いに答える事は無かった。少女は小さく溜息を吐き、表情に影を落とす。
「答えないのですね」
「…ええ」
薬売りは凛とした様子で返答し少女へと真っ直ぐに視線を向けた。その視線は『それは貴方が知らなくても良い事なのだ』と語るように細められており、少女を更に暗い表情へとさせた。が、彼女はめげずに最後の問いを口にした。
「貴方は何故…此処に泊まろうとしているのですか?…雨宿りだけでは…ないでしょう……?」
その問いに薬売りは薄く笑みを浮かべ、真の言葉を返した。
「モノノ怪を、斬る為…ですよ」
第一幕 完
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