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「例えば…」
そう言って医師は軽く手を上げ、俺の方に手の平が見える様に広げた。
その行動に、俺は不思議がりながら、ジッと医師の手を見つめる。
「例えば、人間には指が五本あります、これが正常な形です」
「あ、はぁ…」
俺は医師の指の数を心の中で数えてみる。
自分と同じ五本生えている。
「ですが、胎児奇形だと、指が一本多く六本だったり、少し左右の足の長さが違ったりして生まれます」
医師はそう説明して、上げていた手を膝の上に下ろす。
「まぁ、そう言った軽少な奇形なら、切ったり、体の一部分から肉を集めて足す事で、それなりに治すことが可能です。
内蔵など、臓器が奇形していたり、最悪無い場合には、生まれる事は出来ても、長く生きるのは難しいと思います。
過去の事例でも、だいたい一年から三年間には亡くなっているようです」
医師は重たい口調で話し続けた。
「俺の子供は?…俺の子供はどこがおかしいんですか、先生!」
少し口調が強くなった俺を見て、医師は少し間を空けて口を開く。
「木ノ下さんのお子さんは…右腕がありません」
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