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「じゃあね、武」
新幹線のホームで愛美が俺に手を振る。
「あぁ、愛美も仕事頑張ってな」
新幹線がホームに流れる様に入ってきて、停車した事を確認した後、俺は荷物を手にした。
「可愛い奥様にも宜しくね」
愛美が不意にそんな事を口にする。
可愛い……いや、今はかなり怒ってる筈。
だって電話に出てくれないもん。
「あ、ああ…宜しく言っとくよ」
俺は手にしたお土産を確認する。
「どうしたの武?ひどい汗よ?」
「だ、大丈夫、何でもないよ」
俺はガクガク震えながら新幹線に乗り込むと、愛美と別れた。
加速していく新幹線の窓から、愛美の姿は流れる様に消えていく。
東京を去りながら、彼女の笑顔がいつまでも残っていた。
俺は美咲と結婚していなかったら、愛美と今頃付き合ってたのかな。
不意にそんな事を考える。
美咲はどうなんだろう。
俺は美咲の過去をあまり知らない。
美咲はこんな事を考えた事は無いのだろうか。
俺以外の男を好きになる。
………………。
いや、美咲に限ってそんな訳無いか。
美咲が浮気……俺じゃ有るまいし。
時速270キロの新幹線は、俺を乗せてあっと言う間に俺の街に着いた。
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