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「その……あれだなっ」
半蔵が少し照れた様子で口を開く。
頬が紅く見えるのは、店の照明のせいか、それとも本当に紅いのかは謎だ。
「あれって何だよ」
俺はまだカウンターに並ぶ席には座らず、半蔵を見下ろし気味に立っていた。
「あれって、ほらあれだよ……さっきの…恥ずかしい所見られちまったな…」
半蔵はそう言って空になったグラスを、軽く持ち上げた。
中で氷がカランと音を立てる。
「嘘つけ、本当は自分に酔ってただろ、この変態ナルシストめ!」
「ち、違うよ、俺昔からこんな物静かなキャラだっただろ?
ほら、知的でだけどどこかワイルドってやつ…」
また半蔵の頬が紅くなる。
照れるなら言うなよな!
「そうか、なら人違いだった。
俺の知ってる半蔵は、変態でだけどどこかナルシストな激キモ野郎だったからな」
俺は半蔵に背を向けると、店の出口に向かって歩き出す。
「嘘です武さん!私が間違ってました!」
すかさず半蔵が俺に泣きついてくる。
ほら、簡単に釣れた。
「なら本当に半蔵か確認するぞ?」
「はい!」
「ナルシストだよな?」
「はい!」
「自分の事キモいって自覚してるよな?」
「はい!」
「繭の事好きだよな?」
「はい!!」
「よし!俺の知ってる半蔵に間違いない、座るか」
半蔵の肩に腕を回し、ポンポンと叩くと、二人並んでカウンターの席に座った。
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