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「武、今の私、凄く幸せ」
「はは…何だよいきなり」
ホテルの一室で、そんな言葉を囁く。
大きなベッドの中で、お互いに身を寄り添って愛を確かめていく。
「武、愛してる……」
俺の腕の中に居る彼女は、優しく俺の肌に唇を当てて何度も愛撫を続ける。
「あぁ、俺もだよ」
少しだけ腕に力を入れて、彼女を引き寄せる。
「痛っ…」
お互い裸で寄り添っているからか、チクリとした感触が俺を襲う。
「どうしたの、武?」
「いや、何でも無いよ。
気のせいだから」
もしかして、アレが原因だとしても、彼女にそんな失礼な事は絶対に言えない。
気のせいだ、絶対に気のせいだ。
心の中で、何度もそう言い聞かせて、再び彼女を自分へと引き寄せる。
すると、またチクリと俺の胸に、言いようの無い痛みが俺を襲う。
「どうしたの武…」
彼女は、俺の胸に埋めていた顔を俺の方へ向け、上目遣いで投げ掛ける。
「美咲の事………考えてたでしょ」
彼女はポツリと、そんな言葉を漏らした。
「私と2人で居る時だけは、私だけを見て。
私だけを考えて。
私だけに、武を独占させて」
彼女はまた、俺の胸に顔を埋める。
「分かってるよ、ごめんな、綾…」
俺は、腕の中の綾の頭を優しく撫でながら呟いた。
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