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「今日も仕事って言ってきたの?」
「ん?……」
「美咲に」
「ん…あぁ」
「本当、可哀想よね。
まさか、武と私がこんな事になってるなんて……」
俺は綾の言葉に黙ったまま、綾にキスをした。
「…武って乱暴ね」
唇を離すと、綾は淫靡な笑みを浮かべながら俺の体を愛撫する。
「私と美咲………どっちを愛してる?」
綾の問いに、俺は沈黙で受け流す。
「昔と変わらないわね。
まだ自分から逃げてる、逃げ切れる訳でも無いのに、バカみたい」
俺が黙っていると、綾は一人淡々と喋り続けた。
俺はその度に、胸の辺りにチクチクとした痛みを覚えていた。
そしてその痛みは徐々に膨らむ様に広がっていく。
まるで体を這う虫の様な感覚だった。
俺は我慢出来ずに、ベッドの中に視線を移した。
毛?
そこで見た物は大量の毛だった。
しかもチリチリでモジャモジャで、言葉では言い表せないぐらい気持ち悪い光景だった。
「どうしたの?武」
綾が抱きついてくる度に、チリチリがチクチクして痛かった。
俺はこの毛を、昔見た覚えがある気がする。
「武、気になるのこの毛が?」
綾の突然の問いに、俺は困惑した。
とてもじゃないが、気になるなんて本音は言えない。
俺は沈黙で受け流す事に決めた。
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