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「どうぞ、こちらです」
ホテルのレストランに到着すると、一番奥の窓際の席に案内された。
席に着くと、窓硝子一面の東京の夜景が飛び込んでくる。
彼女は、そんな夜景を見て素直に喜んでいた。
とりあえず、一番良い席を予約しておいて正解だった。
「愛美、こんな所で良かったのか?
言えば他の店とかも探したけど」
2人っきりになった時、俺は彼女にそんな事を尋ねた。
「こんな所だなんて、一流ホテルのレストランでディナーするんだよ、凄いじゃない。
こう言うお店って、私には敷居が高くてとても入れないもの」
彼女は辺りを見回して、小声で話す。
「どうぞ、メニューで御座います」
ボーイが現れて、丁寧にメニューを差し出す。
メニューを受け取った彼女の表情が、みるみるうちに青ざめていく。
それを見た俺は、待っているボーイに声をかける。
「とりあえず先に乾杯したいから、頼んでおいたワインを持ってきて下さい」
そう告げると、ボーイはかしこまりましたと言って、恭しく頭を下げて俺達のテーブルから去っていった。
「どうした愛美、そんな深刻そうな顔して」
俺が彼女を心配して声をかけると、彼女はメニューをテーブルに置いてゆっくり口を開いた。
「め、メニューの字が日本語じゃない…」
俺は軽く吹いた。
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