14234人が本棚に入れています
本棚に追加
「メニューが日本語じゃないし、値段も書いてないし…どうしよう武」
彼女は周りに聞かれない様に小声で話す。
「いや、こう言うお店だとこれが普通だから」
彼女の慌てように笑った。
「ふ、普通って、ここは日本だよ、ジャパンよジャパン」
何故英語に言い換えたのかは謎だが、彼女との些細なやりとりが俺には妙に新鮮で楽しかった。
「ワインをお持ちしました」
再びボーイが現れた。
手には頼んでおいたワインを持って。
それから俺がボーイにコースを頼むと、ボーイはワインをグラスに注いでテーブルを去った。
「武凄いね、堂々として格好良いよ」
彼女は俺に微笑む。
「愛実は社長の秘書だし、フランス語ぐらい読めるだろ?」
「まさか、社長秘書って言っても第五秘書だし、やってる事は書類整理ばっかり。
英語ならそれなりに出来るけど、フランス語なんて全然…」
彼女はそう言って溜め息を吐いた。
「そっか…大変なんだな、愛実も」
「それより乾杯しましょ」
少し沈んだ空気に、彼女の明るい声が走る。
「何に乾杯しよっか?」
グラスを持った彼女が尋ねる。
「そうだな、久し振りの再会に乾杯かな」
「そうだね、私達運命だもんね」
彼女はそう口にして、グラスとグラスを重ね合わせた。
最初のコメントを投稿しよう!