深まる夜を越えて

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「そう、みんな元気なんだ」 彼女はカクテルの注がれたグラスを、カウンターに置く。 「ああ、あの半蔵が弁護士になったし、何だかんだ言ってみんな大人になったんだなって思わされるよ」 「そうだね、みんな大人になって変わっていくんだね」 彼女は少し悲しげな表情を見せる。 「愛美?」 「変わらないのは私だけかな…」 静かで落ち着いたバーの中で、愛実の声が弱々しく響く。 「何かあったのか、愛美?」 彼女の悲しげな横顔に、俺は心配しながらも惹かれていた。 「ねぇ武、私達が離れる時にした約束って、まだ覚えてる?」 俺の方にちょっと泣きそうな顔を向け、彼女は俺に話し掛ける。 「あぁ…覚えてるよ」 俺は覚悟を決めた後、ゆっくりと口を動かした。 その言葉を聞いた彼女は、少し明るい表情へと変わる。 「正直、愛美に出逢うまで忘れてたけど、ちゃんと思い出してるよ」 「そう……有難うね」 彼女はまた顔を下に向け、グラスに入ったカクテルを見つめる。 カクテルに写る彼女の顔は、ゆらゆらと揺れてまるで泣いている様に見えた。 「私ね、まだ武の事が好きなんだけど…」 少しの沈黙の後、彼女は俺に告げた。
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