深まる夜を越えて

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「愛美……嬉しいよ」 俺は愛美の顔を見ずに答える。 「けど、ごめん」 続けざまに喋った。 「ごめん、実は俺結婚してるんだ…」 そう言って口を塞ぐ様にグラスをあてる。 「………そっかぁ」 彼女から出た言葉は、意外な言葉だった。 「多分ね、そんな感じしてたんだ。 まさか結婚までしてるなんて思ってなかったけど」 「ごめん、あの時の約束は今の俺には守れないよ」 「次、また逢えたら付き合うってね。 私達まだ中学生だったし、少し恥ずかしい約束したね」 少し照れた様子で笑う彼女。 「愛美は?彼氏とかは…」 「今は一人だよ。 1ヶ月前に振られちゃった」 その時の彼女の目元は、少し潤んでいた。 「そっか…」 俺は小さく呟く。 こんな時、どんな言葉を彼女にかけてあげれば良いのか、俺には未だによく解らない。 「大丈夫か?」 気の利かない台詞。 「うん」 彼女は首を縦に振る。 「何だかね、中学生の時の約束のせいかな。 想像してたより、悲しくない……かな」 彼女は俺の方を向いて軽く笑って見せる。 「そう言えば、武の奥さんってどんな人?美人?」 彼女は笑顔を作り俺に問い掛ける。 俺もそれに合わせる様に笑った。
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