14233人が本棚に入れています
本棚に追加
/122ページ
「さっぱりしましたか?」
風呂からあがって、リビングの扉を開けると、美咲が味噌汁碗片手にそんな言葉を投げ掛ける。
「うん、お陰様で…」
風呂上がりの俺は、さっきまでの汗臭さやベト付きは無かった。
「父さん、母さんおはよ」
いつもの日課になっている、両親の写真を飾っている仏壇に挨拶をする。
「はい、どうぞ武さん、食べて下さい」
「有難う、いただきます」
熱々の湯気が立ち昇る白いご飯を口に放り込む。
美咲と結婚して、七年の月日が過ぎた。
美咲と俺は、俺の家を出る事無く今でもここに住み続けている。
二人の間にはまだ子供は居ないが、それでも充分な程に幸せに満ち足りた日々を過ごしていた。
俺は二年前に美咲のお父さん、鳳神さんの元を離れ資産家として独立した。
まぁ、今でもアドバイスなどを貰ったりして、良い関係を続けている。
唯一不満とは言わないが、会う度に孫はまだか?と言われるのは、正直並々ならぬプレッシャーを感じてしまう。
今年で26になる俺達は、心も体も少しは大人になったと最近感じる様になってきた。
俺の友人綾や、半蔵達も無事に大学を卒業して……。
「武さん、あの事考えてくれましたか?」
向かいの席に座った美咲が、突然そんな事を言い出した。
最初のコメントを投稿しよう!