プロローグ

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『この学校には、物凄い不幸な生徒がいる…』 この噂は、最早学校中の話題になっていた。 確かに、その生徒の不幸さといったら、本当に半端じゃない。 最近になると、わざわざ見に来る者までいる始末(さらにはクラスの男子達が、その生徒の不幸を利用して、『見物一回につき五十円』という商売を始めだす)。 もしかすると、学校の七不思議に追加されるかもしれないくらいだ…。 『2年B組』 例の不幸な生徒のいる教室である。 彼の席は、窓側の一番後ろ。 なんとなく、前や横の席の間隔が、通常より広く空けられてるような気がする…。 ふと気がつくと、廊下側から視線を感じた。 見れば、四、五人程の女の子が、廊下から教室を覗きこんでいる。 見たところ、どうやら新入生のようだった。 外見は、いかにも今時の、どこにでもいそうな女の子。 こちらの方を見て、そして仲間の顔を見て、どこかせわしない。 何やら、 「あの人が――」 「マジ~――」 などと、小声で話ている。 彼は、それを横目で見やり、ため息をついた。 そして、 「こんな事で有名になっても、全ッ然嬉しくない…」 窓の外で、ヒラヒラ舞散る桜を見ながら一言、そう言った…。 彼の名は、 『雨水岬』 十六歳。 背の高さは普通。 髪はショートより少し長め。 外見にこれと言って特徴はない。強いて言えば少々女顔。 そして、現在青春まっさかりの、世界一不幸な高校生――。
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