7376人が本棚に入れています
本棚に追加
『この学校には、物凄い不幸な生徒がいる…』
この噂は、最早学校中の話題になっていた。
確かに、その生徒の不幸さといったら、本当に半端じゃない。
最近になると、わざわざ見に来る者までいる始末(さらにはクラスの男子達が、その生徒の不幸を利用して、『見物一回につき五十円』という商売を始めだす)。
もしかすると、学校の七不思議に追加されるかもしれないくらいだ…。
『2年B組』
例の不幸な生徒のいる教室である。
彼の席は、窓側の一番後ろ。
なんとなく、前や横の席の間隔が、通常より広く空けられてるような気がする…。
ふと気がつくと、廊下側から視線を感じた。
見れば、四、五人程の女の子が、廊下から教室を覗きこんでいる。
見たところ、どうやら新入生のようだった。
外見は、いかにも今時の、どこにでもいそうな女の子。
こちらの方を見て、そして仲間の顔を見て、どこかせわしない。
何やら、
「あの人が――」
「マジ~――」
などと、小声で話ている。
彼は、それを横目で見やり、ため息をついた。
そして、
「こんな事で有名になっても、全ッ然嬉しくない…」
窓の外で、ヒラヒラ舞散る桜を見ながら一言、そう言った…。
彼の名は、
『雨水岬』
十六歳。
背の高さは普通。
髪はショートより少し長め。
外見にこれと言って特徴はない。強いて言えば少々女顔。
そして、現在青春まっさかりの、世界一不幸な高校生――。
最初のコメントを投稿しよう!