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「おう…」
コクリと頷く。
「どうですかね…」
「いや、どうですかねって言われてもな…まぁ、お前が何故その願いにしたか…良く分かった…気がする」
頭をかきながら言う。
「お願いです神様ぁっ!!どうか…どうか僕に、不幸を受け入れてくれる彼女を!」
まるでモテない男のように(実際に不幸のため、モテてない)、岬が泣き付いてきた。
戸惑う神様。
「だぁっ!分かった分かった!それで良いんだな!?後悔はしないんだな!?」
暑苦しいので、岬を引き剥がす。
良く考えろよ…ったく――。
「後悔なんて、滅相もない!」
「何が滅相もないだよ…」
頭をかかえ、神様は深いため息をついた。
そして、呆れた顔で口を開く。
「じゃあ、その願いを叶えてやるよ…。明日の朝お前が目を覚ました時には、テーブルの上に朝メシと、お前の“彼女”がいるハズだ…まぁせいぜい期待してろや…」
岬はそれを聞いて、瞳に涙を浮かべる。
そんなにまで彼女が欲しいのか。
「何か、アンタが神様に見えてきたよ…」
「俺は神様だ」
しばらくしたら様子を見にくる。
神様はそう言って、失明せんばかりの光に包まれて、消えた。
それと同時に、灰色に染まった世界が色を取り戻す。
そして岬と衝突しそうになったトラックが、何事もなかったかのように走り去った。
恐らく、シャットダウンしていた世界の時間の流れが、元に戻ったのだろう。
その様子を見ていた岬は今、破裂しそうな程に身体中が、幸福感で満たされていた。
「アハハハ……やったぁぁぁぁッ!!!」
市街地の一際高い、ビルの屋上に神様がいる。
都会とあって、鼻をさす排気ガスの匂いが立ち込めていた。
「うぇ……これだから人間界は苦手だぜ…」
鉄の柵に肘を置き、全体重をかけ、一段と深いため息をつく。
「はぁぁ…まさか雨水岬が、あんなにも浅はかだったとは…」
そして、高いビルの上から大量の車の流れを傍観し、呟く。
「彼女…か…」
岬の叫びと、神様の呟きが、重なった――。
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