4.自分に出来る事

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「すいません、本当にわざとではなく…」 スカートの中を見るような体勢になっていた事を謝ろうとしたが… 彼女は、自分を落ち着かせるように、口元に手を当てると… 深呼吸をして、俺の元に歩いてきた。 そして、俺の目線まで屈むと… 俺は叩かれると思って、顔を庇う様にして目を閉じるが、 俺の顎を掴み取られると口元に何かを当てられ…拭かれる感覚… 俺は眼を開けると 彼女は、俺のハンカチで俺の口から流れ出る血を拭いていた… 「なんで、庇ったの…」 俺の頬を拭きながら彼女が聞いてくる 「無我夢中で…気がついたら、体が動いていた」 緊張して、俺は無愛想に返事をしてしまった 「直情型…レンと同じですか…」 彼女は、クスリと笑った… 「確かに、先輩も頭で考えるよりも行動する人だからな」 あんまりにも可愛く笑うから、俺も口元を緩めるが、すぐに口の中の痛みで変な顔になったと思う。 「レンが庇ってくれたと本当に思うくらい、似ていたのですからねぇ」 彼女は、俺の顎から手を離すと、少し溢れた自分の涙を拭う… 「先輩は、俺の憧れだから…見間違えてくれて、俺も嬉しいよ」 今度は、普通に俺は微笑む事ができた… たぶん、先輩の死を聞いてから、 初めて、微笑んだと思う… そんな事を考えていた時… 「レンがよく血を流して帰ってくるから… その度、私がこうやってレンの血を拭いていたんですよ」 彼女が、俺の口元をまた拭く… 少ししょっぱい気がして… なぜ、しょっぱいのかを考え… 俺はある事実に気づき、顔を真っ赤にして、口を魚のようにパクパクさせる。 そんな俺の動作を見て、彼女は、俺の目線の先の物を見た… それは、ハンカチ、どこにでもある平凡な物… そんな物に、なぜ俺が動揺しているのか、 彼女はまだ理解してはいない… いや、今、気がついて、彼女も顔を赤くさせた。 なぜなら、そのハンカチは…俺が彼女の涙を拭く為に渡したハンカチだから… 二人で、相手を見つめ合う様に俺たちは固まっていた…
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