6.別れし日常

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嵐のような出来事とは、この事を意味するのだろう… 疲れた… 俺は、ゲームをする気力もなく、近くの喫茶店に入ると、紅茶を頼んだ ここ数日、いろんな事があったけど… 先輩の妹さんと初めて会話した… 今まで会話と言うよりも、挨拶ぐらいしかしたことがないな… よく考えると、俺は彼女の名を知らない… 先輩の紹介も… 「あれが、俺の妹だ」 それだけだったからな… 俺は紅茶を一口飲み… 心を休める…2 月の寒空を見上げ、俺はこれからの事を考える 期末試験も終わり、あとは、卒業式と終業式…それが済めば、3年か… 「進学か、就職か…」 無意識にそう呟いた瞬間… 俺は口に手を当てた。 何を考えているのだろう… こんな時に…未来を… 未来を失った人がいるのに… 俺は、まだ熱い紅茶を一気に飲み干す… 喉を焼くような熱さが、胃に染み渡り、俺は歯を食いしばった… 先輩の居た、今までの日常、一緒にいる筈だった日常は終わった… その日常で描いていた夢は、未来は無い… 俺だけが、先に進む… いや、先輩以外が先へ進んでしまう… 大切な人を、今の俺を形成した先輩を… 俺は過去へと捨てて行こうとしている… 胸の中が苦しい…頭が痛い…イライラする… 「やっぱり、お前か~」 こんなにも俺が苦しんでいるのに…能天気な… いや、馬鹿な声が、俺に向かって発せられる… 俺は、頭を抑えつつ、その声の主へ顔を向ける… 「誰かと思えば…さっき俺に怯えて逃げた臆病者じゃないか」 俺の眼に映った、そいつに言い放った。
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