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「マッチはいりませんか?」
その場所に立つは女の子
人通りない雪積もる冬の中
赤い頭巾に木の靴
悴んだ指先を摩る
「マッチはいりませんか?」
再び問う
沈黙の間にも雪は降り積もる
「いや、私は…」
踏み付けた雪が
ギチリと音をたてた
しかし踏み出した歩みは自ずと止まる
「ねえ、いらないの?」
腕を掴んだ少女の手は服の上からでも細い事がよくわかった
冷たい、木の枝のような指
「買って欲しいのかい?」
「…答えて」
念を押すようにギュッと強く握られる
買わなくてはならないのだろうか
「マッチはいらないよ、もってるから」
「マッチじゃなきゃいるの?」
雪を防ぐかのような前髪が物を言う
「かもしれないな…」
ニコリ
少女の笑みに心臓が高鳴る
「何が欲しいの?」
白く覗く歯が
単純に答えを求めている訳ではない事を言う
「なんでもいいのかい」
少女はまだ手を放さない
「勿論」
言い切るその言葉には
何かしろ意味が潜んでいるように思えた
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