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「ならば私が教えてあげる…あなたを私が肯定してあげる…あなたが祝福できるように」
燃える火のように瞳が揺らめく
願いはもう少女のものだった
少女がマッチ擦ると幻想か夢幻か
彼女が角から出てくるのが見えた
「どこをほっつき歩いてるの、待ってる人がいるんだから!」
「え?だって君は子供が…」
怒りの表情は真実を述べていた
「何いってるの、子供はご馳走を目の前に待たされてるんだから!貴方が帰ってこないせいで…もう」
怒れる彼女は彼を引き連れる
「あ、待って彼女に…」
振り向くそこには誰もいない
「彼女って?」
「代金を…」
雪上には2つの足跡
信じられない
暖炉では炎が歌い
ツリーには星が瞬き
子供は笑い
ゆったりと食事をとる
こんな日が来るなんて思っていなかった
「あなた」
「…ん?」
「やだ、聞いてなかったの」
3人で送る筈だった聖夜
一度も過ごせなかった聖夜
こんなこともあるのだろうか
奇跡、が
突然の幸せに男は笑うしかない
「もう、死んでもいいかもしれない
それぐらい満足だよ」
「私の料理が?」
笑い合う団欒の家族
寝る時は子供にキスをしておやすみをいう
そしてプレゼントをツリーの下に置いてやるんだ
子供の綻ぶ笑みがそれだけで思い浮かぶ
自然と、男も笑っていた
暖かい光が揺れたゆたう
これこそ私が思い描いていた人生
行き交う幸せに飲まれ
行き交う幸福に流される
誰もが望む人生…
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