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「待てよっ。大雪っ」
低い声が追ってくる。愛真は昇降口を飛び出し、正門へ向かって脇目も振らずにひた走る。
(どうしよう、どうしよう。あの顔、怖い。あの目が、怖い)
頭の中はそのことでいっぱいで、思考がままならない。
脳裏に蘇るのは、飛び込んで来た広志の強張った驚きの表情と、恐れを含んだ硬質な瞳。
あの顔と瞳を見た瞬間、記憶の澱の深層に沈む『何か』が呼び起こされようとした。
広志の姿に重なりかけたシルエット。
その途端、言い知れぬ恐怖が身体の底から突き上げ、いても立ってもいられず逃げ出していた。
snowの正体を見破られたことより、『何か』が呼び覚まされる恐怖が愛真の心を支配していた。
だがどうして、それがこんなに怖いのか分からない。
記憶の底に沈めた物があるなんて、今まで考えたこともなかった。
いや、考えないようにしていたのか。
(どうしよう……あんな顔、させるはずじゃなかった。あの目は嫌だ。あの子と同じ)
あの子? それはいったい誰だろう。
前を見つめる瞳に、点滅する信号機が映る。
それに重なるように、薄暗い人影に似たおぼろげなシルエットがちらつく。
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