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(赤、い筋。暗い、道……あの子が)
――ずきんっ。
頭と胸に刺されたような鋭い痛みが走る。
なぜかは分からないけれど、それ以上考えてはいけないと、どこかで警鐘が鳴っていた。
頭の――あるいは心のどこか奥深く、意識の届かない深遠で、無意識の危険信号が点滅している。
(だめだ。もう、考えられない)
たいして走ってもいないのに、浅くなる息を無理矢理大きく吸い込み、勢いを殺して吐き出す。
指先が痺れたように冷たくなり始め、このままでは過呼吸になりかねない。
(気を散らせ。あまり呼吸を意識しちゃだめだ)
背後に迫る足音に意識を向けた時、横断歩道の信号が赤に変わり、仕方なくたたらを踏んで立ち止まる。
立ち止まった、はずだった……
しかし、視界の隅を黒い影の塊が疾風のように駆け抜け、はっとした瞬間。
愛真の身体は、徐行もなしに走り抜けようとしていた車の前へ、飛び出していた。
「っ――!?」
鈍い衝撃が半身で弾け、痛みを感じる間もなく身体が宙に投げ飛ばされる。
意識するより早く反射的に受け身の態勢を取り、そのままアスファルトに叩き付けられた。
その反動で肩が弾み、守ったはずの頭が地面を打つ。
そして呻きすら上げられないまま、意識は闇へと落ちていった。
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