第三章 予期せぬ悲劇

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「優依っ!」  正門前の歩道の片隅に呆然と(たたず)む優依を見付け、急いで駆け寄った。 「ゆき……ど、しよ……」  顔面蒼白でがたがた震える優依をきつく抱き締め、「落ち着け、優依」そっと耳元で囁き、なだめるように背中をさする。  事故の相手は放心状態で車の脇に立ち尽くし、現場には人だかりがし始めていた。  愛真に目を()れば、ぴくりとも動かない血まみれの身体に、的確な応急処置を施しながら、 「おいっ、そこもっと下がれっ。見せもんじゃねえぞ! そっちのあんた、警察呼んでくれっ」  周囲の傍観者に、指示を飛ばす涼介がいた。  そこから少し離れた歩道では、嗚咽(おえつ)する友季はレオンに、取り乱した広志は成矢に取り押さえられていた。 (何があったか知らないが、これだけ生徒が抜け出そうとしたんだ、後十分遅ければ、門を閉めに来た職員が足止めしてくれただろうに)  そうすればこの惨事はまぬがれたはずだが、今更悔やんでも、起きてしまったことはどうにもならない。 (今はとにかく、やるべきことをやるしかない)  遅れて校門を出て来たトーワが、すぐさま友季に駆け寄る。
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