第三章 予期せぬ悲劇

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「トーワっ……トーワあぁあっ! あーちゃんが、あーちゃんがっ」 「友季っ。大丈夫だから、落ち着くんだ」  恐慌状態の友季をトーワはしっかりと抱き締め、弟と短く言葉を交わすと、その場から雪達の方へと戻って来る。  幸いにもホームルームの直前だったせいか、他の生徒や教職員は見当たらない。  しかし追っ付け誰かしら、職員がやって来るだろう。 「トーワ、優依をしばらく頼む。これ以上騒ぎが大きくなると、二次災害が起きかねん」  温和な優男に見える外見に似合わず、頼りになる教師の瞳を見つめ、低く囁く。 「分かった。詳しい話は、レオンが後程」 「そうか。優依、友季ちゃんとここにいるんだ。救急車もすぐに来るから。分かったな」 「っ、うん」  涙に濡れた青白い顔を撫でてやると優依は小さく頷き、友季と固く手を繋ぐ。  二人共に立っているのがやっとな風情だが、ひとまずトーワに預け、 「そこの車っ、ハザードを点けて、路肩に寄せろ。そっちもっ!」  人垣越しに中途半端に停車した車へ声を張り上げながら、雪はひとり奮闘する涼介の援助に向かった。
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