第三章 予期せぬ悲劇

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「どうだ?」 「取りあえず、身体の出血は今の所、命には関わらないと思う。頭は圧迫止血をしてはいるが、この通りだ。肺は無事みたいだが、確実にあばらが何本かイカれてる」  涼介は血で汚れた手で、愛真の頭にワイシャツを押し付けたまま答える。  ワイシャツには相当な量の血が染みて、愛真の息は浅く、顔からは血の気が引き紙のように白くなっていた。 「そうか……かろうじて酸欠になっていないのが、救いだな」 「ああ。頭を動かしたくはなかったんが、チアノーゼになりかけたんで、なんとか気道だけは確保した」  長い闘病生活を経験し、ある意味こういう状況には慣れているが為に冷静な涼介。日頃から積極的に応急処置などを体験していると、いざと言う時に強かった。  それとは対照的に、みっともなく取り乱す広志。そしてそれを抑えようとするレオンと成矢。  成矢にしても十センチ近く身長が低く、二人と広志との体格差を考えれば、振り切られるのも時間の問題だろう。 「兄ちゃん、救急車がもうじき来るぞ。警察も呼んだ。人がいる家が中々見付からんで、遅くなった」 「ありがとう、じいちゃん。警察も呼んでくれたのか」
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