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首にかけたタオルで汗を拭き拭き、走り寄って来た痩せたおじいさんの言葉に、涼介はほっとしたようにいくらか表情を緩める。
(俺が呼ぶまでもなかったようだな。さて、取りあえず、あの馬鹿を片付けるか)
雪は救急車のサイレンが耳に届いたのを契機に立ち上がり、暴れる広志に近付いた。
「もー、いい加減にしぃーっ」
――ごがんっ!
「げっ。成矢、何やっとんねんっ。大丈夫か、ものっそい音したで」
汗で額に前髪を張り付かせた成矢が苛立ちに任せ、広志の後頭部に頭突きをかますと、さすがに痛かったらしく広志が寸の間俯いて固まる。
雪はその襟元をネクタイごと掴み上げた。
「あ、ちょっ、雪っ?」
泡を喰うレオンを尻目に、自分とまったく同じ身長のくせに、体格はひと回り近くもでかいその身体を、
「目障りだ。喚いてるだけなら退いてろっ」
力一杯、野次馬の中へ突き飛ばした。
しかし無情にも野次馬は飛び退き、広志は歩道にひっくり返る。
「広志っ! もーっ、成矢も雪もむちゃや」
「少しほっとけばいいっちゃっ。いっそ、水でもかけりぃー」
「同感だな」
額を押さえながら、まなじりをつり上げる成矢に頷き、雪は踵を返す。
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