第三章 予期せぬ悲劇

41/47
前へ
/297ページ
次へ
「さっさと道を開けろっ。救急車が通れねえだろうがっ!」  涼介が野次馬にがなった時、ちょうど救急車が止まり、救命士がガラガラとストレッチャーと共に降り立った。  説明は涼介に任せ、雪はその場を離れてトーワ達の下へ戻る。 「涼介はあのナリだ、俺が同乗して構わないな?」  愛真の血に汚れた涼介はワイシャツを止血に使ったので、上半身がインナー姿だ。  本来なら教師が同乗するべきなのだろうが、いちいち呼びに行く時間が()しい。  優依と友季をこのまま置いて行くのも避けたいトーワは、短く頷く。 「ああ、頼む。僕はあらかたの処理をしてから行く。真悟さんにも、僕から連絡をしておくよ」 「やだっ。ゆうりも行くっ」  涙でぐしゃぐしゃな顔を(ゆが)め、必死になって、ブレザーの袖にしがみついてくる小作りな手をやんわり外し、 「友季ちゃん。大丈夫だから、後からタクシーを呼んで、優依と涼介と一緒においで」  同じように、不安でいっぱいの表情をした優依の手に預ける。  なぜ、こんな事態に(おちい)ったのか分からないが、少なくとも現場に居合わせた以上、涼介は何かしら知っているはずだ。
/297ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加