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草薙総合病院。手術室前の待合室は、祈るような沈黙に満ちていた。
友季と優依は互いに身を寄せ合い、手を握り締め、その傍らに雪とトーワが座り、それぞれ背中を撫でさすっている。
「トーワっ。愛真の容体はっ?」
連絡を受け、早々に取る物も取りあえず駆けつけたものの、経緯も事情も、真悟は詳しい話を何も知らなかった。
「オペ中でまだなんとも……」
眼鏡のレンズの奥、垂れ目がちな目を伏せ、瞳を頼りなげな色に染めて、立ち上がったトーワは頭を垂れる。
今年で二十歳になる、特別専門学校出身のまだ若い英語教師は、いつも優しげで、落ち着いた雰囲気を漂わせていた。
それがこんなにも、不安そうな表情をしている。
(そんなに悪いのか?)
真悟の胸の内を、ざらりとした不安と恐怖が撫でる。
愛する芳南を失った瞬間の絶望感が、まざまざと蘇った。
(嫌だ。もう、失いたくない。……芳南、愛真を守ってくれ。連れて行くなっ)
いても立ってもいられず、いきさつを問い質そうと口を開きかけた時。
――シュンッ。
手術室へと続く扉が開かれた。
緑の手術着姿で現れた医師は、思いもよらない人物で、真悟は知らず呆然と見上げる。
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