第三章 予期せぬ悲劇

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(あり得ない。今の愛真なら大丈夫だ。絶対に)  襲いくるかつての悪夢の幻影を振り払いながら、真悟がろくに眠れずに過ごした翌日、愛真は無事に特別室へ移された。  しかし、一度も目を開けないまま、丸一昼夜、昏々(こんこん)と眠り続けた。  その間にも、真悟は保険会社を介しての諸々の手続きや、自動ブレーキが作動しない速度で、横断歩道に進入した相手方との示談交渉、雪とトーワは、学校側への状況説明や生徒のケアなど、慌だしく事故処理に追われることになった。 (雪とトーワには悪いが、俺は忙しくしている方が気がまぎれていい。店は聖矢(せいし)とカズテルに任せておけば、しばらくはどうにかなる)  自分の右腕を務める為に、大学在学中に公認会計士の資格を取った聖矢を、なんやかんや言いつつも信頼し、チーフマネージャーを任せている。  サブマネージャーのカズテルは、やはり(ふる)い友人で、人事面や社員教育などに重用しているので、ある程度の期間なら、二人に頼っていられるのだ。 (優依ちゃんと友季ちゃんも、酷いトラウマを抱えずに、済みそうだしな)  愛真の傷は時が癒してくれるが、心の傷はそうたやすくはない。  だからこそ懸念(けねん)していたのだが、二人は秋芳の問診でも、ひとまずは問題なしとされ、真悟のみならず、雪とトーワにとっても救いとなったのだった。  
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