💠

2/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 ハナコはイライラしていた。それは、彼の背があんまりにも高くて、彼女の大好きなおひさまを、さえぎっているからだ。  それに、彼はひどく不恰好だった。葉っぱはギザギザで細いし、頑丈な茎には白くて細かい毛がいっぱい生えていて、体は大きいのに花は地味で小さい。何より頭にくるのは、バッタにかじられても、平気な顔で新しい葉っぱを生やすことだ。だから、やっと隙間が空いて陽が差したと思っても、すぐに陰になってしまう。 「あんたなんか、いなくなっちゃえばいいのに!」  ハナコがイライラをぶつけても、彼はへっちゃらだった。彼は何も言わないけれど、ハナコにはそう見えた。  ある日、世界はハナコが望んだとおりになった。  彼は居なくなった。ニンゲンが来て、彼を根っこからすっぱり刈り取ってしまったのだ。ハナコは、これでおひさまを独り占めすることができると、おおいに喜んだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!