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「早く決めなよ」 気付けば知らない間にみんなが僕の後ろに並んでいた。 その手に持っているのは――ナイフとフォーク。 僕は恐怖のあまり後ろを振り向けなかった。 「ひっ!!」 「アタシお腹すいたー」 上田さんが僕の肩をフォークでつつく。 「もうすぐ食えっから待てよ」 この声はあのチャラチャラしたカップルだ。 「ほんと横川っておいしそうね」 青木さんが僕の耳元で囁く。 ……嫌だ。 冷たい汗が全身を覆う。 「ええ。私もこの前、彼が保健室でぐっすり寝ているところを見てると我慢できなくなってひとくち食べたんですけど、柔らかくておいしかったですよ」 保健室? もしかして跳び箱で失敗して頭を打った時だろうか…… それともトランポリンで跳んでる最中、トランポリンを移動されて床に落下した時だろうか…… 「まぁ、食べたのは背中なんで本人はまだ気付いてませんけどね」 僕はとっさに自分の背中を触った。 ……一か所だけごっそりと穴がある。 「さぁ、早く決めなよ」 「何がいいの? カレー?」 「ステーキもええわね」 「ハンバーグでしょう」 「おひたしなんかもさっぱりしてて良いんじゃない?」 みんなが横川の料理法について、しばし華を咲かせると――急に黙った。 「さあ、ご注文は?」 みんなが僕を見る。 「じゃ……じゃあ……」
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