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可奈子はカウンターの隅に置いてある写真立てを手に取った。
写真立てが置いてある位置は、カウンターの向こう側にいる客には見えないがカウンターのこちら側にいると見える、絶妙の場所だった。
写真には五人の男が写っていた。
「この人ですよね?」
可奈子は写真を品川と井上に見せて一番左端にいる男を指差しながら言った。
「あ!そうですその人!」
井上が叫んだ。
「この人、田村さんですよ。マスターの大学時代のサークル仲間だそうで、よくこの店にも来てました。ここ三ヶ月は来てませんでしたけど……」
可奈子は田村の事を思い出した。
話しやすい人だった、という印象があった。
「田村さん、誰かに恨まれていませんでした?」
品川が聞いた。
「そういう話は聞いていないですが……どうしてですか?」
可奈子は聞き返した。
「ここだけの話なんですが、傷の様子から恐らく犯人は急所にならない箇所を何度も撃ってから心臓を撃ち抜いて殺しています。つまり、とことん痛め付けてから殺しているんです。よっぽど恨みがあると思われます。」
「う……」
可奈子は眉を潜めた。
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