第二章

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昨日はそれこそパラダイスだった。 例のツーショット写真のおかげで、じいちゃんは至極ご機嫌だし、稽古ではそのテンションのままたっぷりしごかれるし。 楓くんも楓くんだ。見ず知らずの俺にあんなことしたら大問題ではないのか。 そのせいで、帰りはミーハー軍団から非難の目(私の楓くんに触るんじゃないわよ!)を浴びるし、今、こうして登校中栗本と成瀬の質問攻めに遭っているわけだ。 「まったく、すげぇなお前は!一日で有名人だぜ。」 「大胆だよね。椋も楓くんも。」 どうやらこいつらもあの場にいたらしい。 「大きなお世話だ。」 「まぁ、そう照れるなよ。もうこの学校でお前の名前を知らない奴はいないんじゃないか?」 たしかにさっきから、道行く人の視線が痛い。 「うぅ、こんな親友がいて俺達は幸せだ。」 な、泣くなよ… と、たわいもないバカ話をしていると女子二人組が現れた。 「おっはよー!有名人とその友達!」 「おはよう。すごいね葛籠くん。」 髪の長い、ハイテンションな前者は露木笠音(ツユキ カサネ)。クラスメート。 ショートカットの後者は日野千夏(ヒノ チナツ)。同じくクラスメート。 というか、なぜこいつらまで知っている。 「昨日、連絡網がまわってきたのよ。不審者が出たっていうのと、この話。」と千夏。 俺はジロリと、隣でまずいという顔をしている成瀬を睨んだ。 連絡網の頂点は委員長である、こいつの家だ。 「いや、あの…一大ニュースだから…ね。」 こんなことに連絡網を使うな。 「まぁいいじゃないの。このことは一生思い出にするべきね!」 と笠音。 忘れたくても忘れられないだろうよ。 「それにしても!こんなに素晴らしいクラスメートを持つなんて、私はなんて幸せなんだろう!」 「もう、笠音ちゃんたら!」 どいつもこいつもバカばっかりだ。 成瀬の流した連絡網の効果は絶大で、俺が教室に入ったとたん、待ってましたとばかりに群がってきた。 質問の内容は、 「どうして、ツーショット撮らせてもらえたんだ?」 知らねぇよ。 「前にも会った事があるのか?」 ねぇよ。多分。 「かっこよかった?」 俺よりは。 等の聞かなくても分かるような物ばかりで、最終的には 「写真私にもちょうだい!」 分かった。 となり、37枚の写真をプリントすることで話は一旦終わった。
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