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昨日はそれこそパラダイスだった。
例のツーショット写真のおかげで、じいちゃんは至極ご機嫌だし、稽古ではそのテンションのままたっぷりしごかれるし。
楓くんも楓くんだ。見ず知らずの俺にあんなことしたら大問題ではないのか。
そのせいで、帰りはミーハー軍団から非難の目(私の楓くんに触るんじゃないわよ!)を浴びるし、今、こうして登校中栗本と成瀬の質問攻めに遭っているわけだ。
「まったく、すげぇなお前は!一日で有名人だぜ。」
「大胆だよね。椋も楓くんも。」
どうやらこいつらもあの場にいたらしい。
「大きなお世話だ。」
「まぁ、そう照れるなよ。もうこの学校でお前の名前を知らない奴はいないんじゃないか?」
たしかにさっきから、道行く人の視線が痛い。
「うぅ、こんな親友がいて俺達は幸せだ。」
な、泣くなよ…
と、たわいもないバカ話をしていると女子二人組が現れた。
「おっはよー!有名人とその友達!」
「おはよう。すごいね葛籠くん。」
髪の長い、ハイテンションな前者は露木笠音(ツユキ カサネ)。クラスメート。
ショートカットの後者は日野千夏(ヒノ チナツ)。同じくクラスメート。
というか、なぜこいつらまで知っている。
「昨日、連絡網がまわってきたのよ。不審者が出たっていうのと、この話。」と千夏。
俺はジロリと、隣でまずいという顔をしている成瀬を睨んだ。
連絡網の頂点は委員長である、こいつの家だ。
「いや、あの…一大ニュースだから…ね。」
こんなことに連絡網を使うな。
「まぁいいじゃないの。このことは一生思い出にするべきね!」
と笠音。
忘れたくても忘れられないだろうよ。
「それにしても!こんなに素晴らしいクラスメートを持つなんて、私はなんて幸せなんだろう!」
「もう、笠音ちゃんたら!」
どいつもこいつもバカばっかりだ。
成瀬の流した連絡網の効果は絶大で、俺が教室に入ったとたん、待ってましたとばかりに群がってきた。
質問の内容は、
「どうして、ツーショット撮らせてもらえたんだ?」
知らねぇよ。
「前にも会った事があるのか?」
ねぇよ。多分。
「かっこよかった?」
俺よりは。
等の聞かなくても分かるような物ばかりで、最終的には
「写真私にもちょうだい!」
分かった。
となり、37枚の写真をプリントすることで話は一旦終わった。
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