第二章

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楓くんとのツーショット事件から四日。 栗本の言った冗談は嘘ではなくなり、俺の名は学校どころか町全体にまで知れ渡ってしまった。 焼き増し料を取っておけば相当な収入になっただろう。 クラス内で囲まれるような事はもうない。 が、事件後初めて授業のある教師・講師もいる訳で、その度に二度と戻らない貴重な時間は失われていった。 もう一度言おう。授業料を返せ。 そして、放課後。この週二度目の社研の活動。 田崎、浦島の二人は一年生三人の到着を心待ちにしているが、おそらく来ないだろう。それに、来ない方が静かでいい。 いつもの活動はなにをしているのかというと、三年生二人は意味不明な論文、資料、その他諸々をぶつぶつ言いながら読み、 俺は社会などとは関係の無い本を読んでいる。 たまに三年の妙ちくりんな意見を聞かされたりもする。 ところが、俺の読みに反して、一人の一年生が部室のドアを叩いた。 「こんにちはー。」 「よく来てくれた。こちらへ。」 田崎がうやうやしく扉を開け、浦島がエスコートする。 調子にのって、手をとってキスとかしてしまいそうなかんじだ。 そう。やってきたのは例の女子。 この方が物語的にもおもしろいであろう。浦島は彼女を椅子に座らせると、 「君のような気がしていたよ。運命というやつかな。」 誰が来てもそう言っただろう。 「運命ですか…。確かにそうかもしれませんね。」 話を合わせなくてもいいぞ。 「私は高峰友里(タカミネ ユリ)といいます。これからよろしくお願いします。」 と言い、起立・礼した。 背がかなり低い。145ぐらいだろうか。 俺は初めに思った質問をぶつけてみた。 「なんでまた、こんな部に?」 こんなとはなんだと二人が振り向く。 「第一印象ですかね?」 良くないと思うぞ。 「まあ、そんな事はどうでもいい。まずはこの部の活動方針を説明しよう。」 そんなものがあったのか。少なくとも俺は説明されていない。 「この部は授業で習わないことを発見する部だ!答のない問題に自分なりの答を見つけ出して欲しい。」 ふむ、そんな真面目な活動方針があったのか。だったらもっと早く教えろよ。 活動方針を聞き終えた高峰さんは、三年生といくつかの会話を交わし、そして、本を読んでいた俺の前に来て二度目のお辞儀をした。 「あらためてこれからよろしくお願いしますね。」 顔を上げた彼女は俺に向けてウインクをした。 …どういう意味で受けとればいいんだ?
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