第三章

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あの楓くん事件からも一ヶ月経った(正確には一ヶ月と二日)。 やっと俺を取り巻く熱は冷めた。 しかし、それと反比例するように、日差しが強くなってきた。 今年は暑い夏になりそうだ。 部活は新しいメンバーが入ったことで活気が増してまい、読書はしづらくなったものの、情報通の高峰さんがオススメの本を教えてくれるため、そう悪くもない。 そんなある日。 不意に栗本から声をかけられた。 「わりぃが、椋。放課後成瀬と家に来てくれないか?」 下手に出るのが不気味だ。 だが、どうせ今日は何もすることは無い。親愛なる栗本くんの願いを聞き入れることにしよう。 意外にも、こいつの家にいくのは初めてだった。 本通りから一本外れた小路に入ると、割方立派な一軒家があった。 「ささ、二人とも上がって上がって。」 「おじゃましまーす。」 「あれ?今日はお母さんいないの?」 どうやら成瀬は以前来た事があるらしい。 「今日は仕事があるんだ。」 そう言いながら2階へと 続く階段を上る。 そして、一つのドアの前で、 「俺の部屋だ。」 なんと…!この扉の向こうにはパラレルワールドが広がっていたのだ! …ぬいぐるみだらけだ。 くま、くま、ねこ、マングース、くま。 俺と成瀬が立ち尽くしていると、栗本は振り向き、違和感のある笑顔をふきまきながら、 「ありゃ、間違えちまった。ハハハハハ…」 勉強机とベットがあったのは俺の見間違いであったようだ。 「そ、そうだよね。栗本の部屋はたしかこっちだったような…。」 成瀬はそう言い、隣のドアを指さした。 「そうそう。ついに俺もヤキがまわっちまったかな?」 俺達は「栗本の部屋」と名乗る部屋へと入った。 狭い和室だ。 早速本題だ。 「話ってなんだよ。」 「栗本から相談なんてめずらしいよね。」 「お、おう。聞いてくれ。ええとだな…。」 以降のこいつの話は、噛んでしまったり同じ所を繰り返したりとグダクダなので要約する。
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