第一章

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授業終了の鐘がなる。 授業中あんなに眠かったのがウソのように視界がはっきりしている。 「今日はここまで。家に帰ったらきちんと復習するように。」 そんな生徒の七割が実行しないであろう発言をして教師は出ていった。 今のは3限。昼休みまではあと1限あるが、腹はペコペコだ。 「おい椋。今日ゲーセン行かない?俺のクレーンゲームの実力見せてやるよ。」 いきなりやって来たこいつは栗本。俺の中学からの同級生だ。 「行かない。」 「なんだよ~。ノリ悪いなぁ。そもそも高校生の本分は遊ぶことだぜ。」 たしかにそれはそうだと思う。 だけど、おまえはそんなにぬいぐるみが欲しいのか? 「まぁいいや、他のやつ誘うとしよう」 そう言い、栗本は別の生徒の方へと向かった。 誰でもいいのか。 申し遅れた。 俺は葛籠椋(ツヅラ リョウ)だ。 変な苗字だろ?テストでは8秒ほど不利だ。 神奈川県立大輪高校2年。普通の小学校に通い、普通の中学校を卒業し、普通の高校に入ってもう1年経った。 早いものだね。もう上級生だ。 そんな普通の高校生に見える俺。確かに俺は普通だ。そういう風に努力してる。 でも、家だけは普通じゃないぜ?驚くなよ。忍者の家系なんだ。 もちろん、誰にも秘密だけどな。 忍者なんて言うと、手裏剣を使ったり、あるいは学園の問題児三人組を連想するかもしれない。 たしかに、戦国時代末期~江戸時代初期は身体能力に優れた忍者が活躍したらしい、手裏剣も使ってた。服部半蔵なんてのは有名だな。 でも今は科学が進歩してる。 どんなにがんばったって、爆弾やマシンガンに手裏剣じゃ勝てないだろ? 忍者たってそこまで特別ではない。スパイみたいなもんだ。もうちっと現実的な存在さ。 んで、忍者の俺が高校なんかにいるかというと、それは俺がまだ16歳だからだ。 まだ子供である以上、忍者なんか関係ない。俺はただの普通のいたってありきたりな高校生なんだ。 さて、自己紹介もこの辺にしとくか。そろそろ次の授業が始まる。準備をしなくちゃね。
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