第一章

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「え?」 なんと楓くんがこっちを見ている。しかし、その顔からは笑顔が消え、鋭い眼光が俺へと光る。 こんな顔を初めてみた。 まずい。まさか見つかるとは思っていなかった。しかも楓くん本人に。 しかし、彼がそんな顔をしていたのはつかの間で、目からファインダーを離した俺の[顔]を見ると、笑顔に戻った。とは言っても最初の笑みとは明らかに違う。心から可笑しいと言う顔だ。 「カットー!」 声が響く。 「駄目でしょー楓くん。そんな顔しちゃー」 「すいません。」 苦笑。 よし。今のうちに… その時。 「…ちょっといいですか?」 あろうことか彼はこちらに向かってきた。ひとごみが割れる。そしてやはりと言うべきか、彼は俺の前で立ち止まった。 楓くんは俺より一学年上。背が高い。 「ファンの人かな?」 楓くんは終始笑顔だ。 、 「あ、えーと祖父が…」 その言葉を聞いたとたん、彼は腹を抱えて笑いだした。俺が目を点にしていると、 「あぁ、ゴメンね。撮影中は写真撮っちゃ駄目なんだよ。」 知っている。 「でも今は撮影中ではないね。…ちょっとカメラを貸してくれるかな?」 そう言うと彼は俺の隣に立ち、近くでポカンと見ていた女子大生にカメラを手渡した。 「すいませんがシャッターを押して頂けますか?」 もちろん断るわけもなく、見事に俺と楓くんとの2ショット写真ができてしまった。 「それじゃあ、おじいさんによろしくね。」 夢のような出来事に放心しかけていた俺にそれだけ言うと、楓くんは撮影へと戻っていった。
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