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街は新年を祝う祭りで賑わいを見せている。
しかし、まるで別世界のように、病室の中は静かだった。
「アレスさん、今日から新しい1年が始まったんですよ。
お祭り、一緒に行きたくありませんか?
……いつ、目を覚ましてくれますか?」
アイナは聖誕祭の夜以来、眠り続けているアレスの右手をさすりながら話しかける。
しかし、一向に答えは返ってこない。
カレルたちが旅立ち、すでに8日が経った。
あれから、アイナは毎日朝から晩までアレスの見舞いに来ていた。
医者の話では、いつ目を覚ましてもおかしくないが、いつ目を覚ますかは分からないとのことだ。
上級魔法の治癒術の使い手であるアイナから見ても、同じ結論に達していた。
それでも、何もしないよりはと毎日魔法をかけ、話しかけながら手をさすり、刺激を与えている。
そんな毎日が8日も続き、目を覚まさないアレスと二人きりで新年を迎え、流石に心細くなり始めた。
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