森の王はかく語る

4/8
前へ
/37ページ
次へ
「とにかくすぐにメシエに向かいましょう」  私はがっくりと肩を落とすハーンを叱咤するように言いました。同時に自身の心も奮い立たせました。とにかく彼の元へ行かねば、という気持ちが絶望を拭ったのです。  私は命と同等に大切な竪琴一つ脇に抱えると馬に飛び乗り、ジオンの待つメシエ国へと走らせました。  六日間馬を走らせ、私はメシエ北部、テディに到着しました。  ジオンが住う城は大理石の壁の美しい城で、深緑の森に佇む姿はさながら貴婦人のようでした。ザイオンが最後に建てた王宮で、自らの名を取って<ジオール宮殿>と名付けられておりました。 「ジオン」  風の通る気持ちの良い部屋でジオンは寝台に横になっていました。  私が声をかけると印象的なサファイアの瞳がこちらを覗きました。 「レヴァノか、間に合わないかと思ったぞ」  ジオンはそう笑って言いました。 「冗談は止してください。ハーン殿から聞いた時、息が詰まりましたよ」 「古傷が老体に応えたようだ」
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加