あの日

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 真夜中の国道を走るワゴンに私は乗っていた。法定速度を少し超えている。  車通りは少ない。両側に並ぶニュータウン。橙色の電灯が長いアスファルトの道を照らす。  対向車はあるのに同じ方向へ向かう車はなかった。その対向車もしゅんしゅんとすぐに後ろに消え去る。時々頭上を通り過ぎる信号機は点滅していて、自分がいる場所が普通でないような気がしていた。  車内は満席。しかし言葉を発する者はいない。皆、一様に厳しい顔をしている。しかし同時にどこか達観した表情も伺えた。そして深い悲しみと大きな不安を。 「窓、開けようか」  と言う声が静寂が破った。  車内は暖房が効きすぎているくらいだった。私は頷いた。  冬が近付いているのか、窓が開くと冷たい夜気が滑り込んできた。私は自然と深く息をついていた。  それからふと空を見た。  群青の夜空があった。日本アルプスの影さえ見えた。  その青の美しさといったらなかった。  冷えた夜こそ、空は澄むのだと教えてくれたのは教えてくれたのは誰だったか。 ――明日は晴れだ。 とぼんやりと思った。  雲一つないよく晴れた朝だった。  彼は美しい場所へと旅立った。  
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