昔は地底にいた

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 おれは昔、山が噴火した時に飛び出たマグマだった。  地球の底でフツフツドロドロとした、一塊のマグマだった。  地上に飛び出した途端、一つの大きな石になって、地面を引っ掻いて走った。  やがて雨に冷やされ、川に削られ、川底を転がり、とうとう小さな丸い石になった。  今は雨にシトシト振られて、冷たく濡れている。  おれは雨に濡れた石っころ。  昔は地球の底にいた。  フツフツドロドロと、その身をたぎらせて、真っ赤に燃えて。  あの時一緒に出て来た兄弟たちは、今やアスファルトの底に眠っている。  おれもこうして、雨に濡れて、かつての燃えたぎる胸の熱さは消えてしまった。  けれどこれでも、この小さな胸の中には、煌めく鉱石があるのだ。  それはおれ自身が知っていればいい。  マグマの名残が今も燻っていることを。  雨が降る町、夜明け前。  
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