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優しい風が辺りを包み込む。シアの瞼がゆっくりと開き、翡翠の色が柔らかく光った。
「北……」
ぽつりと呟かれた言葉に、グレンを始めルイやナギも反応する。シアは3人は振り返り微笑んだ。
「イリス達の向かった方角が分かりました。ここより北。丁度、私がグレンと向かっていた方角です」
一瞬呆気にとられていた3人はその言葉で我に返り、微笑を浮かべるシアに視線を向ける。
「北……か」
シアの言葉を自分に言い聞かせるように繰り返すルイ。そんなルイを一瞥し、ナギは口を開いた。
「確かここから北にちょっと行った所に村があった筈だよ」
その言葉にシアの表情が少し明るくなる。
「ほんとですか!? 良かった! じゃあ日が暮れないうちに行きましょう!」
「まぁ2日は野宿かなー」
明るくなったシアの表情がそのナギの言葉によって固まる。
「あのー……ナギさん? ちょっとってどれぐらい……」
ぎこちない笑みを浮かべ問うシアに、ナギは眩しい程の満面の笑みで答えた。
「大体20里(※約80キロメートル)?」
放たれた無情な言葉。
シアだけでなく、残り2人の表情も凍る。そう、ルイでさえもその時はある意味で完全にその顔から表情が消えた。
今日は野宿だ。
どこがちょっとだ。ふざけるな。
その場にいるナギ以外の全員が覚悟し、心の中で突っ込みを入れた。
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