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結局宿は見つからず、シアはがっくりと肩を落としながらも合流地点に向かった。そして、そこに人影を見つける。
「……あれ?」
そこにいたのはグレンだった。彼は既に到着していたらしい。シアは慌てて彼の元へと駆け寄る。
「ごっごめん! 宿見つからなくて……」
俯く彼女に、グレンは明るく笑いかける。
「気にすんな、泊めてくれそうな宿、見つけたからさ」
ほっとするような笑顔。
シアは一瞬目を見張ったが、つられて自分も淡く微笑んだ。
「良かった、ありがとう」
そう言うとグレン自身も安心したような表情を浮かべ「こっちだ」と言いながら宿へと向かった。
その雰囲気は先程のぎこちないものではなく、自然な、そして柔らかいものへと変化していた。
そんな中、彼らを見つめる影がひとつ。
太陽と月の陰、混沌とした闇の中。
食い入るように彼らを見つめていた"ソレ"の口端は、ゆっくりと不気味な笑みを象った。
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