Courtesies‐交歓‐

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「っと……」 気を失い、地に吸い込まれるように倒れ掛けたシアをグレンは素早く抱き留めた。茶化すように口笛を吹くナギを睨み少し動揺の色を見せているルイに視線を向ける。 「大丈夫、少し疲れただけだろ」 そう言って明るく振る舞うグレン。しかし、内心心配で堪らなかったと言うことは本人のみぞ知る。 「……すまない」 微かに紺碧の瞳に影が射す。グレンは自分に寄りかかるシアに一瞬視線を移し、ルイを見ると再び笑ってみせた。 「大丈夫だって。満足そうな顔してるしな」 その笑顔に漸く心のつっかえが取れたのか、ルイは軽く息をつき、その口を開いた。 「お前達は……あの女を追っているのか?」 ――あの女、即ちイリス。 しかし、グレンの脳裏にはその隣にいた深紅の少女の姿がよぎった。己の妹と、瓜二つのあの少女。彼女は一体何者なのか。 様々な憶測が脳内に流れるものの、それらは全て打ち消される。これ以上は無駄かと考える事を止めると、不審げにこちらを見つめているルイと目が合った。 「あ……ああ、まぁ、そうだな」 返事をする事も忘れ考え込んでいたのか、そう気付き慌てて返答するとルイはその瞳を鋭利に光らせた。 「私もあの女を追う身。情報があれば教えて欲しい」 苛烈な光を灯す瞳は、先程の彼女からは想像もつかない。彼女の纏う雰囲気に多少気圧されかけた時、呑気な声が背後から聞こえてきた。 「一緒に行ったらいいんじゃない? そんな面倒くさい事しなくてもさ」  
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